私の言葉にサトシは一瞬黙り、それから突如、こんなことを言い出した。
「あ、思い出した! その看護師さん、実家が店をやっているんだった。だから多分、安く手に入ったんだよ。それでくれたんだ。いや、義理チョコなのにずいぶん高そうだなって、俺も不思議に思っていたんだ。今、謎が解けたよ」
「店って、何の?」
「実は彼女の実家、ゴディバ屋なんだ」
はぁ?
ゴディバ屋って……
サトシ、何かもう少しマシな嘘はつけないわけ?
呆れた言い訳に白けた気持ちになりつつ、私はこう告げる。
「このチョコ、義理なら私が食べてもいい?」
「え? あぁ……いいよ」
サトシの答えを聞いてゴディバの箱を開けると、中に入っていたのはトリュフだった。
私はそれをひとつつまみ、口に放り込む。
口の中で溶けるトリュフは甘いのに……
私の心は、ビターだった。