無意識のうち笑みがこぼれ、クッションで顔を覆う。

本当は、かなり心配していたのだ。

サトシが、バレンタインをももちゃんと過ごそうとしていたらどうしよう、と。

そんな心配がどうしても拭えなかったのは、最近またサトシの部屋でクレンジングクリームを見つけてしまったからだった。

ちなみに、今回は勇気を出してクレンジングクリームのことをサトシに問い詰めてみた。

サトシは「間違えて買ってしまったんだ」と言い張っていたけれど――

クレンジングクリームをいったい何と間違えて買ったというのか。

しかも、間違えて買ったのだとしたら、どうして使いかけなのか。


言葉にできない質問が、頭の中にうず巻いていた。


他人から見たら、サトシの発言の明らかに不自然な点を何故問い詰めないのか、不思議に思えるかもしれない。

だけど、私がそれ以上問い詰められなかった理由はひとつだけだ。


好きだから。


好きだから――

核心をつく質問をして、答えを聞くのが怖かった。