「――大丈夫? 少し休もうか」
スノボの練習を開始して、二時間も経っただろうか。
何度目かも分からない尻もちをついた私の顔を、谷本先生がのぞきこんできた。
「いえ、大丈夫です」
「いや、疲れているときに滑ると危ないから、少し休もう」
谷本先生に促されて、ゲレンデからレストハウスに移動する。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
谷本先生の買ってきてくれたホットココアが、体を中心からじわりと温かく満たしてくれた。
「それにしても友里ちゃん、ずいぶん頑張ったね」
「すみません、上達が遅くて」
「そんなことないよ。初めてのわりには、短時間でかなり上手くなったよ」
「本当ですか?」
早くサトシと一緒に滑れるようになりたくて。
その想いだけで必死にがんばったのだけど……
きっとサトシは私のそんな気持ちなど、知る由もないだろう。


