サトシは、自分の欲求に怖ろしいほと素直な男だ。

「初心者に教えているより、滑っている方が楽しい」と思ったのだろう。

それはそうだろうけど、初心者の恋人を連れてきた以上、責任を取って欲しい!


「あの、谷本先生もどうぞ上級者コースに行ってください。初心者向けのスノボ教室とかやっていると思うので、私、インストラクターの方に教えてもらいますから」

おずおずとそう告げると

「見くびってもらっちゃ困るなぁ。俺はそこらのインストラクターより教え方うまいよ?」

谷本先生は腰に手をあてる。

「いえ、そうじゃなくて、せっかく来たのに結衣子さんと滑れないのは申し訳ないので」

「そんな気、使わなくていいって」

とんっと私の肩を叩いた谷本先生のゴーグルのレンズが、太陽光をキラキラと反射していた。