「さてと」

私がサトシの高価かつ無意味な荷物に呆気にとられていたところ、サトシがおもむろにダンボールを開けはじめた。

「俺、引越し荷物の片付けでもしようかな」

「え?」

片づけを……なぜ今するの?

今日は恋人が初めて自分の部屋に遊びに来た日だというのに、どうしてその訪問中に引越荷物の片付けをする必要があるわけ?


――まさか、今日私が誘われたのは、引越荷物の片付け要員としてだったりして。


そんな自分の思いつきを、慌てて頭から追い払う。

いや、いい方向へ考えてみよう。そう、例えば……


サトシは多忙ゆえ、引越荷物の片付けをする時間が取れなかった。

ようやく取れた休みである今日は、どうしても片付けをしなくてはならない。

そのため本当は時間がないのだけど、それでも何とか私と会おうとした。

だから今、こうして「私と会うこと」と「片付け」を同時進行せざるをえない。


――うん、そうそう。仕方ないのよ、サトシは多忙なんだから。


自分を無理やり納得させると、

「片付け、手伝うね」

サトシの隣でダンボールに手をかけた。

するとサトシは私に笑顔を向け、予想外の発言をしたのだった。

「ありがとう! じゃあ友里が片付けをしている間、俺は暇だからパソコンでもいじってるよ」