私の手から、クレンジングクリームが離れて床に転がった。。
見開いた瞳がうるんで、涙がこぼれそうになってしまう。
だってそれは、私が何より待ち望んでいた言葉だったから――
両手を口元にあてて立ちすくむ私に、「どうしたんだよ」とサトシが微笑んだ。
「行きたくない?」
私は慌てて首を振り
「行きたい!」
サトシの首に抱きついた。
「ところで友里、何か落としたけど」
私が落としたクレンジングクリームにサトシが手を伸ばそうとしたけど
「いいの、それ、何でもないから」
抱きついた手に力を込めて、私はサトシの動きを制止する。
そんなクレンジングクリームなんて、捨ててしまえばいい。
サトシは、私をご両親に紹介してくれるのだから。
サトシの本命は、間違いなく私。
浮気の一つや二つに、目くじらを立てることなんてない。


