「何これ、カヌー? どうしてカヌーなんて持ってるの?」

「友達に誘われて、一度カヌーをやりに行ったんだ。そのときに買った」

「一度?」

「一度しか行かなかったから、そのとき使っただけ。もういらないけど、粗大ゴミの日がいつか分からなくてさ」

「……」

カヌーの横には、自転車があった。

「自転車には、よく乗るの?」

「いや。その自転車は路上では乗れないんだ。競技用自転車でブレーキがついていないから、路上で乗るのは違法だし、危ないだろ」

「競技用? 自転車競技やってるの?」

「いいや。レースをやっている友達が持ってて、恰好いいと思って俺も買ったんだ。でも路上で乗れないから、乗るところがなくて乗ってない」

「……」
 

その他にも、サトシの物置部屋には、買ったけれど使っていないというものが数多くあった。

どれもこれも、欲しいと思ったその場の一時の感情で買ってしまったもののようだった。