「ここ、フィレステーキがうまいらしいよ。俺、それ頼んでみようかな」 サトシが照れくさそうに、メニューに目を落とす。 「私も同じのにしようかな」 そう答えながら、私はメニュー越しにサトシを見つめていた。 サトシに対する私の不安と喜びは、いつもシーソー状態だ。 サトシがどちらかをほんの少しつつくだけで、どちらの気持ちにも簡単に傾く。 不安も悲しみも。 喜びも幸せも。 サトシ次第の、私の心のシーソー。 ねぇ、サトシ。 早くこのシーソーを安定させてよ。 もちろん、幸せの方向に……