「そこに立って。写真撮ってあげるよ」
「私の写真?」
いや、別にこんなところで撮らなくても。
しかも、ツーショット写真ならともかく、一人の写真なんて……
いい、いい、と首を振る私に、「遠慮しなくていいから」とサトシがデジカメを取り出しながらなおもしつこく勧めてくる。
別に遠慮しているわけではないのだけどと思いつつ、仕方なくその前に立ってみた。
そんな私に向けてカメラを構えると、サトシはこんな事を言い放ったのだった。
「ここ、お寺だしさ。裏は墓地だし、うまいこと心霊写真が撮れたら面白いんだけど!」
心霊写真でも撮れたらって……
全然面白くない上に、そもそもそんな写真に写りたくないんだけど!
私が眉間にしわを寄せた瞬間、サトシがシャッターを押した。
それから画像を再生し、じっと見入ってから、残念そうに顎に手をあてた。
「うーん、心霊写真は撮れてないみたいだなぁ」
苦笑する私の頭上ではなお、すずめがチュンチュン騒いでいた。


