「友里、今度、清里に一緒に行こう」

サトシがそんな電話をかけてきたのは、当直明けの月曜日のことだった。

「突然どうしたの?」

「実は、病院の先生で清里にリゾートマンションを持っている人がいてさ。いつでも貸してくれるっていうから、一緒に行こうよ」

秋の清里。

それはとてもロマンチックなイメージで……

「嬉しい、行きたい!」

私のテンションが一気に上がる。

「せっかく買ったBMWで、まだ友里と遠出してないもんな」


夏の終わりに、サトシはBMWのコンバーチブルを衝動買いした。

サトシはもともと四駆に乗っていて、それだってかなり新しいものだったけれど。

ある日突然、BMWに乗って登場したのだった。

「四駆はどうするの? 手放すの?」 

私の質問に、サトシは首を振った。

「いいや、両方乗るよ。だって、四駆とコンバーチブルは用途が違うだろ。アウトドア用と、ドライブ用。都合に合わせて使い分ける」


用途が違うから、都合に合わせて使い分ける……

サトシのその言葉が、今になって私の胸をざわつかせていた。
 

ねぇ、サトシ。

「恋人」も、都合に合わせて複数を使いわけるつもりじゃないよね……?