「そういえば、今度の週末は、土日両方とも当直なんだ」

サトシがそう言い出したのは、谷本先生の部屋からの帰り道のことだった。

「両方?」

「あぁ」

運転中のサトシは、私の顔を見ずにうなずく。


土日連続で当直だなんて。

そんな勤務ローテーション、普通ありえるのだろうか。

もしかして、当直と偽って「ももちゃん」とどこかに行くつもりなのだろうかと、疑いの気持ちは大きくなる。

サトシが不自然に思えることを口にするたびに、私の脳裏には、ももちゃんの影がちらつくのだ。

しかし……


「大変ね、がんばって」

「ありがとう」


サトシが仕事にかこつけた嘘をついているとだけは、思いたくなかった。

車窓を流れていく街の明かりに目を向ける。