「喧嘩するほどなんとやらっていうじゃない!お互いのこと大好きなんだね~」

あたしは睨み合っている二人を可笑しそうに眺めた。

「なっ!大好き!?俺が徳美を?」

「うん」

笑顔でうなずくと祥平くんは苦い顔をし

「俺が、俺が好きなのは…!」

そう強くあたしを見てくる。

「祥平!!どーどー」

へ?となるあたしを余所に徳美が祥平くんの背中をポンポンと撫でた。

「一応電車の中だからねーみんなの注目浴びすぎだからねー」

徳美が慣れたように祥平くんに言い聞かせるとはっと我に返った。

「ごめん杏菜ちゃん、大きい声出して…」

「いや…むしろごめんなさい。なんかわかんないけど気に触ること言っちゃったみたいだし」

そううつむくと三人の間に沈黙が生まれた。

「あっ!あたしたちみたいなのが憧れるとか杏菜変わってるね~。でも田渕くんとそんな感じじゃなかった?」

沈黙を破るように徳美がそう言った。

「田渕くんと?あたし仲良くないよ?つい最近出会ったばっかだしさ」