あれからあたしと徳美は暗くなるまで駅ビルで過ごした。どちらからともなく帰る雰囲気になり、今は電車に揺られている。

「あー!楽しかったね~!」

「うん!やっぱクレープ最高だった!」

「はいはい…杏菜は食べることで頭いっぱいだね~」

徳美はため息をつきながら満足そうにしてるあたしを眺めた。

「あったりまえぢゃん!食べることがあたしの生き甲斐みたいなもんよ!」

「いっ」

そういって腕を振り上げるとその腕に鈍い感覚が走り後ろの方からは声が聞こえた。
振り返るとそこには顔面を押さえた男の人が立っていて、あたしはすぐに自分のしてしまったことを理解し勢いよく頭を下げる。

「すいません!不注意でした!」

「大丈夫大丈夫」

そう2つの声が重なった。
片方は男の人、もう一人は…徳美?
不思議に思い頭をあげるとそこには笑顔の祥平くんが立っていた。

「祥平くん!?」

「さっきぶりだね~!」

と笑みを深めた。

「ごめんなさい!痛かったよね?」

あたしは少し赤くなっている祥平くんの鼻に手を伸ばすと、祥平くんは手をひらひらふって大丈夫だよと笑ってくれた。

「俺、杏菜ちゃんが知ってるように喧嘩しほうだいの毎日送ってたからこれくらいどうってこと!」

「でも…」

そうわいってくれてもやっぱり…。

あたしは困ったように下を向くと隣で徳美があははと笑いはじめた。

「大丈夫だよ杏菜!祥平の鼻軟骨ないから!」

「え?」

は?軟骨がない?
なに?なになに?
骨がないってこと?

「徳美いいよそんなフォロー…さすがに無理ありすぎるし…」

しょぼくれたあたしを見て徳美と祥平くんは顔を見合わせて笑った。

「杏菜ちゃんこれがちだよ?触ってみる?」

「いーよ祥平くんまで合わせなくたって…」

すると祥平くんがあたしの手をつかんで鼻まで持っていった。