「……あいつ…やっぱ馬鹿だな?」

その様子を見て田渕はぷっと吹き出し、近くで待ってくれていた祥平の方に首を向けると苦笑いしている祥平の姿が目に入った。

「そう?」

「わかんねーの?じゃあ祥平はもっと馬鹿だな」

祥平のことをあははっと笑って杏菜たちが下った階段とは違う階段の方に向かう田渕をよそに

「…そう、かもね」

そうつぶやいて杏菜が降っていった階段の方をひとり悲しそうな、愛しそうな目を向ける祥平を田渕は知るはずもなかった。