あれからどれくらい走っただろう。
もう…
もう大丈夫だよね…
あたしは足を止めはぁはぁ肩を上げて息をする。
「おい…」
「ん?」
「手」
「ごめんなさい!必死で…」
ずっと手を掴んでいたことを思い出して慌てて離す。
「あんたなんで俺連れてきたの?」
「…だってあなた、あんなことする人には見えなくて…」
「は?」
「瞳の奥で"こんなの俺じゃない"って"こんなこと本当はしたくない"って叫んでるように見えたから…」
「……だからってあんな危ないヤツラの中から奪還?」
「だって!助けなきゃって」
あたしは必死に説明しているとその人はあたしの両腕にそっと触れた。
「こんなに震えてるのに?」
見ればあたしの腕は恐さからか震えていた。
気がつけばあたしは足の力が抜けその場にぺたんと座り込んでいた。
「…怖…かった…」
そのまま瞳には大粒の涙が溜まりはじめる。
男の人はそれを見てあたしと同じ視線になるようにしゃがみ、そして頭をなでなでしてにっこり笑った。
「ありがとう。俺の本当の気持ち気付いてくれて、救ってくれて」
あたしはその笑顔を見てとてもほっとしたのか溜まっていた涙が頬を伝った。
そしてそれに対して微笑み返した。

