「そ…だね!うん、まぁ…それだけ!じゃあね」
あたしは視線をまた下に戻しうろたえながらそう答え手を軽くあげた。
「なんだお前?まぁはいよ〜」
田渕くんが返事をした瞬間踵を返してその場を去った。
ちょっとちょっと!?
どうした自分!
しっかりしろ杉杏菜!
相手はあの天然毒舌野郎だぞ!
心臓静かになってよー!
はぁはぁ言いながら4組に帰るとさっきよりも増えたクラスのみんなが不思議そうに見てくる。
「おはよ杏菜。どーしたの?」
「お.おはよ…いや、ちょっとありえないことが起きて…」
膝に手をつき途切れ途切れ答えるとそこに徳美が現れた。
「おやおや〜そんなに顔赤く染めて"ありえないこと"って?」
ニヤニヤしながら徳美が聞くと近くにいた女子があたしを囲った。
「なに!?ついに杏菜にも春が!?」
「やだっ杏菜聞いてないよ」
「うらやましい〜」
みんなが騒ぎ出すとあたしはため息をついて否定するように手を振った。
「違う違う!杉に春は来ませんよ〜ついでに徳美!顔が赤いのは久しぶりに走ったからです〜」
その回答にみんな大笑いしまた違う話をし始めた。
はぁ〜徳美っていっつも
核心を突いてくるっていうか
的確だよな〜…
そんなことを思いながらみんながしている話題を上の空で聞いていた。

