「いってーっ!何だよ!?」

「何だよぢゃなーい!まな板って色気ないって言った!」

「本当のこと言ったまでじゃん…」

あぁ…そうだ
思い出したよ…

前にあのミーハーな徳美が話していたことを思い出した。

((田渕真宏))
なんでこんな美貌でいるのに未だに南くんになれないのか
それは人並み離れたデリカシーのなさ。
天然の域を超えて思ったことを素直に率直に伝えてしまうからだ。
何人の女子がそんな彼の言葉に泣かされた。
でも.やはりなんだかんだで隠れファンが多かったり…

なんていう情報を聞いたのを思い出したあたしは今更ながらその情報に納得をした。

「納得」

あたしはそうつぶやいて何回か小さくうなずいた。

「は?なんか言ったか?」

「…別に〜」

「あ.そ…ってか駅着いたけどどうする?送る?」

そんな他愛もない会話をしている間にいつの間にか駅に着いていた。

「いや…大丈夫!ここまでおんぶしてくれてありがと。たぶんもう歩ける!」

「そ?」

田渕くんはそういう杏菜を背中から下ろした。
あたしは言ったとおりしっかり自分で立っている。

「よかったよかった!じゃあ俺帰るわ」

「うん.ばいばーい」

そういって田渕くんは背を向けあたしは小さく手を振り改札の方へ向かおうとした。