「わたしならいくらでもカンニング出来るわよ。でもこれを読むとね、そんなの意味がないと思うの」

美幸はそう言った。

「出来は悪くても、正々堂々としていたい。龍神様からもらった力は誰かのために使いたい」


「そうね」

わたしは頷いた。

「わたしも、特別な力があったらそう思うわ、きっと」


「あら、志鶴にだってあるじゃない」


わたし?


「ここの人達の力とは違うけどね、志鶴といると優しい気持ちになれるの。それってすごい事なんだよ」



あの時、美幸はそう言ってくれた。

それも誰かのために使える力なんだろうか

そう、例えば今、わたしに微笑みかける圭吾さんのために

そうだといいな



「圭吾さんは他の人のために力を使っているのよね?」

わたしがそう言うと、圭吾さんは首を横に振った。


「僕の場合は、仕事だからそうしているだけだよ」