ママを早くに亡くしたわたしは『かわいそうな志鶴ちゃん』だった。

そして、『大変な三田さん』が抱えた『小さなお子さん』だった。

親父はわたしを大切に育ててくれたけど、自分が足手まといなんじゃないか、いない方がいいんじゃないかって思いはずっと消えなかった。


誰かに必要とされたかった。

必要だって思ってほしかった。

圭吾さんがつらい時、一緒にいたかった。

一緒にいてほしいと思ってほしかった。


半ベソで子供っぽい気持ちを全部ぶちまけて、恥ずかしくなって、カップ麺のスープを一気に飲み干した。

まったく! 色気のカケラもありゃしない


「志鶴が思っているよりはるかにずっと、僕は志鶴を必要としているよ」

圭吾さんは空の容器と割り箸をわたしの手から取りあげながら言った。

「昨日一人でいたのは志鶴がいなくてもいいからじゃない。昨日一緒にいたら、僕は行き着くところまで行ってしまうのが分かっていたからだ」


行き着くところ?

それって……


真っ赤になって口をパクパクさせるわたしを見て、圭吾さんは上を見上げてあきらめたようなため息をついた。