「父が亡くなって、あの子が仕事を継いだのよ。ちょっと気難しい子だけれど、気にしないであげてね」


『はい』とは答えたけど、怖いお兄さんだったらどうしよう


そして、最初に出迎えてくれたお婆さんは和子さん。

伯母さんとママの乳母をしていた人だって。

伯母さんのお嫁入りにくっついて羽竜家に来たらしい。

ママってお嬢様だったんだ!


後は通いのお手伝いさんが何人かと、敷地の管理人のおじさんがいるとかで……

うわぁん どんだけご大層なおうちなの?


なのに親父は、わたしの事を簡単に伯母さんに話した後、『よろしくお願いします』の一言であっさりと一人娘を置いて帰って行った。


ちょっと!

『伯母さんの言うことをよく聞くんだぞ』

娘のわたしに言うことはそれだけ?

バカ親父!

涙の一つくらいこぼしたっていいでしょう?


「大丈夫よ。お父様は元気で帰っていらっしゃるわ」

伯母さんがそっと手を握ってくれた。


無言でうなずいてみたけど、別れが悲しいっていうよりも、ほぼ見ず知らずのお家に放り込まれた不安の方が強い。