「僕は父さんよりは丈夫だよ」


「そうだとしても、羽竜の仕事は激務ですもの。あなた一人で抱え込むのは無理よ。死んでしまうわ!」


死んでしまう?

何、それ?


わたしの手がドアノブから滑った。

カタッと小さな音が鳴った。


二人の声が急にしなくなって、わたしの目の前のドアがゆっくりと開いた。


「志鶴」


わたしは目を上げた。

圭吾さんが立っている。


「声が聞こえたから」


わたしは小さな声で言い訳をして、思わず数歩下がってしまった。


圭吾さんの表情が強張った。


「騒がしかったね。ゴメン」


圭吾さんの悔やむような口調に、泣きたくなった。

どうして後ろに下がってしまったの?

きっと、わたしが怖がってると思われた。