姉弟ゲンカ?


わたしは、ドアをほんの少し開けた。

二人の姿は見えない。


「お母様は騙せても、わたしはそうは行かなくってよ。羽竜の娘ですもの」


「少し疲れているだけだよ。騒ぎすぎだ」

圭吾さんが険しい声で答える。


「叔父様や司に手伝ってもらえばいいじゃない」


「できない」


「いつまで仲違いすれば気が済むの。 もう、司を許しておやりなさい」


「許してるよ!」

圭吾さんが怒鳴るように言った。

「とっくの昔に許してる!」


「それなら――」


「今更どの面下げて手伝ってくれって頼める? あれだけのケンカをしたのに!」


圭吾さんの声に、わたしは思わず身を縮めた。

親父が物静かなタイプだったので、わたしは男の人が声を荒げるのを見たことがないのだ。


「でも、このままじゃお父様の二の舞よ」

彩名さんは、圭吾さんの怒鳴り声をものともせずに食い下がった。