親父にメールを打っている手が止まる。

どうしよう

圭吾さんの事、書こうかな



圭吾さんは相変わらず、わたしの事を大切にしてくれる。

龍の訓練に付き合ってくれるし、勉強も見てくれる。

わたしのおしゃべりだって、嫌な顔ひとつしないで聞いていてくれる。

でも、恋人同士ってこんなじゃないよね?


「あんまり悩まなくていいよ」

圭吾さんはそう言う。

「僕の気持ちを知っておいてもらいたかっただけだから。志鶴は今まで通り、ここで楽しく暮らしていればいいんだ」


ちょっと迷ったけれど、親父へのメールにはプロポーズのことは書かない事に決めた。

決まってもいないことだもの

わたしはそのまま送信ボタンを押した。


さてと、そろそろ寝ようかな。


パソコンの電源を落として、部屋の明かりを消そうとした時、ドアの向こうから彩名さんの声が聞こえた。

珍しく激しい口調で話している。


「圭吾! お待ちなさい」

「うるさいな! 大丈夫だって言ってるだろ!」