「笑い事じゃないですよ、彩名さん」

彩名さんのアトリエでわたしはむくれて言った。

「だいたいここに来て二ヶ月くらいしかたってないんですよ。どうやったら結婚話まで飛躍するんですか?」


「圭吾にしては我慢した方だと思うわ。あの子、たぶん志鶴ちゃんが来てすぐに気持ちを決めたのだと思うの」


マジで?


「志鶴ちゃんは今の圭吾しか知らないでしょうけれど、あの子、あなたが来てから本当に変わったのよ。よい方にね」


「伯母様は圭吾さんが立ち直れないんじゃないか心配していたって言ってましたけど」


「大袈裟に言った訳ではないのよ」

彩名さんは顔を曇らせて言った。

「高校生の時、圭吾には真剣にお付き合いしていた方がいたの。一つ年上で――わたしの隣のクラスの人だったわ」


「ひょっとして竜田川さんっていいます?」


「あら、ご存知?」


「妹さんの方ですけど」

感じは悪いけど、あの子のお姉さんならさぞかし美人だろう。