「ねえ、圭吾さん」

二人っきりになってから、わたしは口を開いた。


「ん? 何?」


「みんながさっき言ってたんだけど……圭吾さんが龍神様の子孫だって」


「ああ、よくある昔話だよ。海を鎮めるために毎年若い娘が生贄(いけにえ)になる。村で最後に残った娘は海から生きて帰って来た。龍神の子を身篭って。娘は竜宮に帰らず、生まれた子供が羽竜の始祖となった――そんな話だ」


「『線』ってみんなが言うのは?」

圭吾さんは横目でチラッとわたしを見た。

「一種のお祓いとか、結界みたいなものだよ。羽竜家は――そうだな、神主みたいなものかな。神社を守って、お祓いのような事もするよ」


圭吾さんの口調はどこか淡々としていて、昔からの迷信だと言っているみたい。

でも、さっき、友達は本気で言っていたと思う。


「他にも言われた事があるの。わたし、圭吾さんのお嫁さんになるのに来たと思われてるんだって。知ってた?」


「ああ知っているよ」


圭吾さんはサラっと認めた。


「知ってたの?!」