「こんなトカゲ、どの図鑑にも載ってないよ」


「限られた地域に生息する珍しい生き物って事でしょう?」


「夢のないことを言えばそうだね」

圭吾さんは苦笑い。

「ここは生物学者が注目するような場所じゃないし、地元の人間は神の使いの龍だと思っているから生物学的な分類なんて思いつきもしないだろう」


「この子達、神様のお使いなんだ」


わたしの足元に真っ白い龍が寄ってきた。

ママが飼っていたのに似てる。

そっと手を伸ばすと、小さな鼻先をわたしの手に押し付けた。


「竜城神社を知っているだろう? 闘龍はもともと奉納神事だよ。大会に出てみる? 二ヶ月あるから十分訓練できるよ」


「竜田川さんも出るかな」


「あの娘は優勝候補だよ」


「じゃあ出なきゃ」


わたしの足元にいた白い龍が、羽を広げて飛び去った。


「それにしても、竜田川さんがどうしていつもわたしに突っ掛かってくるのか全然分かんないの」