「ねえ、和子さん」

わたしは手にしたお花をじっと見ながら言った。


「何でございますか?」


「ここのお家、仏壇はないの?」


「ございませんよ――志鶴様、もう少し長くお切り下さい」


わたしは心持ち長めに花の茎を落とした。

生け花って難しい。


「当家は、というよりこの辺りのお宅は神道ですから、神棚だけです」


そういえば、通学途中のバスで大きな神社の前を通りかかる。

竜城(たつき)神社といって、龍神様を奉っていると友達が教えてくれた。


「ふうん」


「急にどうなさいました?」


「ママのお仏壇ね、扉を閉めて、うちにそのままなの。お水もご飯も上げてない」

わたしは剣山に小菊を挿した。

「お花も」


和子さんは少し押し黙ってから

「小さな花瓶を差し上げます」

と言った。