「こんなに人と話した事がないんで、疲れてしまっただけ。乗ってもいい?」


「ああ、いいよ。おいで」


圭吾さんは、助手席のドアを開けてわたしを車に乗せた。


「僕ともしゃべりたくない?」

圭吾さんは運転席に乗り込むと、そう言った。


「礼儀知らずだと思うかもしれませんけど、何も聞かないで一方的にしゃべってもらえると嬉しいわ」


圭吾さんはクスッと笑った。


「女の子って、おしゃべり好きだと思っていたのに」


「好きですよ。『おしゃべり』ならね。今日のは質問とか尋問だったわ」


「小さな町だからね、他所から来た人は目立つんだ。すぐに収まるよ。情報が伝わるのも早いから」


だといいけど


運転席側の窓がコツコツと鳴った。

制服姿の男の子が車の横に立っている。

圭吾さんが大きなため息をついた。


「君の気持ちが今分かったよ。ちょっと待ってて」


圭吾さんは車を降りると、男の子を連れて車から離れた。