最初の出会い方がまずかったせいか、圭吾さんはとにかくわたしに弱かった。

夕食の時も、自分の横にわたしを座らせ、ずっと世話を焼き続けた。


「これは好き?」

「アレルギーとかある?」


圭吾さんは、緊張して口数の少ないわたしに、根気よく話しかけた。


それはとても珍しい事だったらしく、彩名さんも和子さんを筆頭とするお手伝いさん達も呆気にとられていた。


「圭吾がこんなに喋るのを見たのは何ヶ月ぶりかしら」

伯母さんだけは、何だか嬉しそうだ。


圭吾さんに勧められるままに料理に箸をつけた。


誰かが作ったご飯なんて何年ぶりだろう?


「おいしい」


わたしがそう言うと、圭吾さんは嬉しそうな笑顔を見せた。


こんな綺麗な笑顔をする人が、本当に気難しいんだろうか?

わたしには、穏やかで優しい人にしか見えない。