しばらくしてアトリエに戻って来た圭吾さんは、自分でコーヒーを入れて、わたしの横の椅子に座った。

わたしはちょっとばかりビビって、自分の椅子を横にずらした。


「困ったな……僕が怖い?」


圭吾さんの言葉に慌てて首を横に振る。


「人見知りなんですって。初対面の人は苦手らしいわよ」

彩名さんが助け舟を出してくれた。


「うーん……僕は君と仲良くなりたいんだけどダメかな?」


大人の男の人がいかにも弱り切った様子なのが、何だかおかしかった。


「『ダメかな』ってきかれたら、ダメって言えないわ」

わたしは小さな声で言った。


「よかった」

圭吾さんはホッとしたようだった。

「学校は新学期からの編入だから、違和感なく入れると思うよ。二年生はクラス替えになってるしね」


わたしはうなずいた。


「制服と教科書は明日買いに行こう」


「わたしが連れて行くわね」

彩名さんが言った。