「僕が保護者だけど、まさか自分で自分に結納を納める訳にもいかないしね」

圭吾さんがぼやいた。


「それ、そんなに大事なの?」


「特に結納金がね」

彩名さんが茶化すように言った。

「女性側の婚約破棄は倍返しだったわよね。いったいいくら積む気でいたのかしら?」


「黙れ、彩名」

圭吾さんは唸るように言った。


よく分からなかったけれど、どうやら圭吾さんは何かズルをしようとしていたらしい。


「困った人」

わたしは笑いながら圭吾さんの肩に頭を寄せた。


圭吾さんは不満みたいだけど、二人の関係をゆっくり進めたいわたしにはちょうどいいわ。


「手を繋ぐところから始める約束よ?」


わたしがそう言うと、圭吾さんはわたしを抱き寄せて頭のてっぺんにキスをした。


「分かってる」


「でもね――」

わたしは圭吾さんの耳元にそっと囁いた。