受話器を渡すと圭吾さんがまくし立てた。


「いいですか? 僕は真面目に言っているんです。不埒な事は何ひとつしていません――ええ、そうです。手も握ってませんよ」


圭吾さん、それは言い過ぎじゃない?

ん? ってことは、親父の言う『間違い』って……

ちょっと!

娘になんて事きくのよ!


「どうしてって、彼女を好きだからです。他に理由なんてありません」


親父も頑なだけど、圭吾さんも粘る粘る。

国際電話って一分いくらかかるんだろ。


かれこれ一時間揉めた末に、貴子伯母様まで加わって、何とか話がまとまったらしい。


「手強かった……」

圭吾さんは、疲れ果てたように頭を抱えて椅子に座り込んだ。


「花嫁の父よ。当然じゃない」

彩名さんがティーポットの紅茶をカップに注ぎながら言った。

「お疲れ様。お話はまとまって?」


「なんとかね」


「圭吾さん、お砂糖入れる?」

わたしがきくと、圭吾さんはゲラゲラと笑い出した。