「どうしても、です。お願いします」

圭吾さんが電話に向かって、頭を下げんばかりに頼んでいる。


相手はうちの親父。


圭吾さんが国際電話をかけて、わたしと結婚したいと親父に言ったのが事の発端だ。


親父は最初に、わたしに電話を代わってくれと言った。


――どうなってるんだ?


どうなってるって言われても……


「圭吾さんのお嫁さんになろうと思って」

――そっちへ行ってまだ三ヶ月だぞ

「だって、圭吾さんがわたしがいいって言うんだもの」

――何かあったのか?

「何かって?」

――つまり……その、何だ、間違いというかなんというか


親父の言い方は歯切れが悪い。


「間違いって何の?」


わたしがそう言った途端に、後ろをウロウロと歩き回っていた圭吾さんが、喉を詰まらせたようにむせた。


――ああ、いい。もう一度、圭吾君に代わってくれ