親父、ホントにここにわたしを置いて行く気?


目の前にそびえ立つ純和風な門構えに、はっきり言ってわたしはビビってる。

死んだママのお姉さんちって聞いていたのに

――いたのにですよ

目の前のこれはどう見ても、時代劇の大名屋敷。

インターホンとかある?


キョロキョロとあたりを見回すわたしを尻目に、親父はさっさと敷地に入って行く。


そりゃあ門は開いているけどさ、門番が出て来て取り押さえられるんじゃないの?


「志鶴、早くしなさい」

親父が振り向いて言った。


うん 門番も忍者もいなさそう


手にしたかばんを抱え直して、わたしは門から足を踏み入れた。



親父とママは周囲の反対を押しきっての駆け落ち婚。

だからママの親戚って誰にも会ったことがない。

もっとも親父の方も、介護付きの老人ホームに入居してるおばあちゃんがいるだけだ。

今まで親父とわたしと二人きり、肩寄せ合って仲良く暮らしてきた


――つもりだったのに