私立聖ブルージョークス女学院2

 さてカトリック系の学校である以上、アドベントが終わって祝われるクリスマスこそが最大の年中行事になるはずだが、高校ではもう冬休みに入ってしまうし、寮生も全員帰省してしまうので、聖ブルージョークス女学院では学校行事としてのクリスマスはない。
 その代わり、期末試験が終わると現代風にクリスマスケーキを手作りする家庭科の授業が必修になっている。環は家庭科の教師と一緒に、あるクラスの調理実習を監督する事になった。
 やはりクリスマスが近づいて浮かれているのか、生徒たちはキャッキャ騒ぎながらケーキの生地をこねていた。だが、型に入れた生地をオーブンレンジに入れてタイマーをセットする段になると、一転してシンと静まりかえり、まるで金庫破りでもしているかのように、入念に10台全てのレンジのタイマーを合わせていた。
 クリームを練りながら待っていると、一人の生徒が「あ!そろそろだわ!」と叫んだ。生徒たちは一斉に並んだレンジの方を見つめる。まず1台目が「チン」と音を立てた。一瞬遅れて隣のレンジが「チン」と音を立てた。すると生徒たちは「キャー!」と黄色い歓声を上げた。
 レンジの扉を開けて中の焼け具合を見もしていないうちに、何をあんなに喜んでいるのだろう?と環は不思議に思った。だが、生徒たちは相変わらずじっと残りのレンジを見つめている。
 やがて3台目のレンジが「チン」と音を立て、4台目が一瞬遅れて「チン」。そして5台目と6台目が……
 事情を理解した環は最後のレンジが音を立て終わったところで、大きく両手をパンパンとたたいて生徒たちの注意を自分に向けさせ言った。
「はあい、気が済んだかしら?手元がお留守になってるわよ。だいたいね!レンジの音が『チンチン』と聞こえるのが、そんなに嬉しいんですか、あなたたちは?もっと別に気にする事がいくらでもあるでしょう!」