私立聖ブルージョークス女学院にはチャペルに勤務するシスターたちが運営している植物園がある。様々な草花、ハーブなどが栽培されていて、生徒たちの理科の授業の教材や情操教育にも使われている。
あれ以来、性懲りもなく片山に対してストーカー的言動を繰り返す九条院若菜を追いかけ回す毎日が続いていて、環はちょっと精神的に疲労を感じていた。精神安定作用のあるハーブでも分けてもらおうと思って立ち寄ったのだった。
ガラスの壁で覆われた一軒家ほどの大きさの植物園の前のベンチでは、まだ若い一人のシスターが座って聖書を読んでいた。環が事情を離すとそのシスターは笑顔で承諾してくれた。服のポケットから鍵束を取り出しドアのカギを開ける。驚いた事に三つも頑丈な錠前がかけられていた。
中に入ってシスターと並んで歩きながら環は訊いてみた。
「ずいぶん厳重に鍵をかけていらっしゃいますね?泥棒でも出るんですか?」
シスターは上品に笑いながら答えた。
「まあ、花泥棒は罪にならないとは申しますが、セントジョンズワートは数に限りがありますし」
「は?そのセントジョンズなんとかって何ですか?」
「ハーブの一種ですわ。聖ヨハネのハーブという意味です。ほら、もうすぐ6月24日でしょう?」
「あ、あはは、すみません、私はクリスチャンではないので何の事か……」
「6月24日は聖ヨハネの誕生日だとされています」
「へえ。あら、でもキリスト教の聖者の記念日ってたいてい亡くなった日とかですよね。誕生日が記念日の聖人なんて初めて聞きました」
「誕生日が記念日になっているのは、イエス様、聖母マリア様、そしてヨハネ様の三人だけです。ですからヨハネ様にちなむハーブもまた別格なのですよ」
あれ以来、性懲りもなく片山に対してストーカー的言動を繰り返す九条院若菜を追いかけ回す毎日が続いていて、環はちょっと精神的に疲労を感じていた。精神安定作用のあるハーブでも分けてもらおうと思って立ち寄ったのだった。
ガラスの壁で覆われた一軒家ほどの大きさの植物園の前のベンチでは、まだ若い一人のシスターが座って聖書を読んでいた。環が事情を離すとそのシスターは笑顔で承諾してくれた。服のポケットから鍵束を取り出しドアのカギを開ける。驚いた事に三つも頑丈な錠前がかけられていた。
中に入ってシスターと並んで歩きながら環は訊いてみた。
「ずいぶん厳重に鍵をかけていらっしゃいますね?泥棒でも出るんですか?」
シスターは上品に笑いながら答えた。
「まあ、花泥棒は罪にならないとは申しますが、セントジョンズワートは数に限りがありますし」
「は?そのセントジョンズなんとかって何ですか?」
「ハーブの一種ですわ。聖ヨハネのハーブという意味です。ほら、もうすぐ6月24日でしょう?」
「あ、あはは、すみません、私はクリスチャンではないので何の事か……」
「6月24日は聖ヨハネの誕生日だとされています」
「へえ。あら、でもキリスト教の聖者の記念日ってたいてい亡くなった日とかですよね。誕生日が記念日の聖人なんて初めて聞きました」
「誕生日が記念日になっているのは、イエス様、聖母マリア様、そしてヨハネ様の三人だけです。ですからヨハネ様にちなむハーブもまた別格なのですよ」



