おそらくあの広い家に、拓実さんと住んでいたのだろう。


で、拓実さんは結婚するからもう帰ってこない、と。


「…………」


そう全てを理解した途端、どうしようもない怒りに支配された。


右手首についている腕時計を見る。


「なんか俺も楽しみになってきちゃって、一緒にそれ買いに行ったんだ」


嬉しそうに子供の話をする拓実さんの顔が浮かぶ。


「…どうしたら良いんだよ……」


時計を強く握りしめ、俺は俯いた。