兄の影響で始めた空手。

しかし超えるべき兄の背は遠すぎ、姉である丹下 雛菊(たんげ ひなぎく)では相手にならず。

よきライバル、切磋琢磨する相手に恵まれず、彼はその力を鬱積させていった。

その力のベクトルを『正』に向けられず、『負』の方向へと加速させてしまう。

喧嘩、暴力沙汰、傷害。

傷つけた相手は数知れず。

寧ろそうしたい衝動に駆られて、最愛の姉の声をも無視して夜の盛り場へと彷徨い出て行く日々。

止めようとする雛菊を突き飛ばして怪我させて、そんな自分が許せなくて。

己を律する事のできない弱さ。

精神的な弱さ。

その苛立ちを、繁華街のゴロツキどもに叩きつけた。