―《城》―


「優夜と刹那はどこだ?」

「あの二人は今日も姫を探しに外へ行かれました」


顔にシワがある中年期の男性が歯を見せて不敵に笑う。


「そうか、あやつらも漸く 正気に戻ったな」


男性は片手に持っていたワイングラスを回しながら窓の外を見る。


「ハッハッハ! 愚かな姫と恋をするなんて 馬鹿げている」


豪快に笑った男性はグラスを真っ白な絨毯に投げつけた。
中のワインが絨毯に染みを作った。


「私の甥をタブらかしたあの憎き姫は 必ずや 殺す」