優夜はびしょ濡れの状態で紅茶を用意するため、キッチンに向かっていた。
隣に、愛すべき憐と大切な刹那が居ない。
そう思うと刹那は何か寂しさを感じた。
静かな廊下に響くのは雨音と自分の足音だけ。
優夜は不意に思い出した。
憐と要の会話を…。
『「あいつらの記憶を奪って、ようやく正気に戻してやったのに…」
『「貴様も物好きだな、あんな操り人形なんかに惚れ込むなんてな…」』
要の言葉。
『「どうした? ただの道具の記憶を奪っただけで 何か問題でも?」』
要の言っていたことが事実なら、何かを忘れている気がするのも納得がいった。
奪われた記憶も…―。
嘘も真実も…―。
優夜はため息をつき、窓の外を見た。
「………あれ」
優夜は降り続く雨を眺めながら不意に疑問を抱いた。
『何故、此処に居るのか』
それさえ、知らずに 優夜はおじ様の傍に居続けていた。

