「あ」

リンゴをもったまま何かを思い出したように立ち止まるリク。

「何だ?リク」
「今日、試験終わったら一時帰宅できるよな?」
「え?ああ。そうだな。何かあるのか?」
「いや……」

リクはリンゴを持ったまま困惑を示し、思わず黙り込んだ。

「ソラに会うのか?」
「……えっと」

カイはリクを一瞥すると、何も言わずに歩き出す。

「だって、お前、認めてないだろ?ソラの洗礼の事だって、高等士官学校の入学の事だって。ソラ、傷ついてたよ」

カイは一瞬狼狽したような顔を見せたが、何事もなかったかのように真顔に戻り、また無言で歩き出す。

「カイっ!ソラの話だって聞いてあげなきゃ駄目だよ。俺たち、3人で親友じゃないか」

カイは無言で振り返る。水色の瞳が緋色に輝く。
「お前、わかってるだろ。どれだけ軍隊が危険か。それに……」

カイの口調が荒くなる。
息を呑むリク。

「あの事、ソラに言えるのか?」

リクの掌から、真っ赤なリンゴが落ちた。