ルナがため息をつく。
「本当に洗礼受けちゃったのね」
丁寧に紅を塗られた唇がぷっくりと動く。
サラサラの髪の毛をかきあげながら立ち上がるルナ。

「ソラ?」

ルナは私の顔を覗き込む。

「え?あ、な、何?」

私はびくっと立ち上がる。

「もう、ソラったら。何ぼんやりしちゃってるの?」

「ごめんごめん」

ルナは悪戯っぽく目を輝かせる。
「もしかして、恋?」

「はぁ?」
私は持っていた本を思わず落とした。
派手な音と誇りが巻き上がる。
「ちょっと、ソラ!先生に怒られるわよ」
「だって、ルナが変なこと言うから」

私は慌てて本を拾う。

「ねえ、ソラ」
ルナは立ち上がり、私の肩にそっと手を置いた。

「私、好きな人ができたの」

「え?」

私は慌てて振り返る。

真顔のルナがそこにいた。