この二人といると嫌なことが少しだけ忘れられる。
希衣のことを考えなくてすむ。
だから余計に、俺は塾に行こうとする。
「それで、ここは直角三角形だから1:2:√3になって」
「あーそっか!じゃあ答えは5√3㎝?」
「うん。合ってる」
「やっとできたぁ~」
ぐっと伸びをする夢架。
今日は授業はないから、自習室で夢架と自習していた。
最初は千尋もいたのに観たいドラマの再放送を録画し忘れたとかで、ついさっき帰ってしまったのだ。
「律ありがとっ!ほんと助かる~あとで何か奢る」
「えー女子に奢らせるなんて悪い気分」
「あっじゃあチョコあげる!」
そっか。
もうすぐバレンタインだからか。
「ありがと、うれしい」
夢架って何かすごくいいやつだと思う。
一緒にいて、たまに意味もなく温かな気持ちになる。
素直そのまんまだし。
居心地がいい。

