刹那音



「律~数学教えてくんない?高校の課題全然分かんなくて…」

受験期間にごめん、と謝りながら夢架は聞く。


「平気。いいよ」

数学は好きだ。

それに教えることは筋道を立てるということ。

理解してないと出来ないから、自分の勉強にもなる。

「やったー!じゃあ塾ついたら三平方のとこお願いしますっ」


夢架はなんか最近、いつも元気。

部活やってた頃よりよく話すようになった。


「律~俺には国語…」

「あ、ごめん文系無理」

「うわぁ夢架チャンにだけいい顔しやがって~」

「ちょ…そういうんじゃないから!」

「あはは~二人とも仲いいよねーっ」


こんな毎日が、嫌いじゃなかったりする。


千尋と、夢架と、俺。


むしろ楽しくて、この日々を手放したくないとさえ思う。