刹那音



自分の気持ちをごまかすように陸上に没頭していた。

いつのまにか全国まで進んで、どこだかわからない高校からオファーが来たりした。


引退して部活がなくなると、今度は勉強に没頭していた。

ごまかすように。

まぎらわすように。


それで受けようとした県内一の進学校に、希衣が受けるなんて言うから、ひとつレベルをおとすことにした。


そんなわけで。

毎日塾で気をまぎらわす。


「律くーん!千尋くーん!」


ふっと我に返る。

高い声が背後から二人を呼び止める。