「……え」 ――希衣だった。 「…あっ、律」 希衣が目を見開いた。 ――心臓がきゅって痛くなる。 …速くなる。 「はい…教科書」 「あっ、ありがとう!!」 教科書を拾ってあげただけで、こんなにも素敵な笑顔をくれる。 「あのさ…希衣」 「ん??」 「――好きな人とか、いる?」 …希衣と話したくて、 思わず口走った言葉だった。