「でも、俺はそれでもいいって思ってる。何でだと思う?」

進藤君はまた、苦手な目であたしを見つめる。


なんで……?
そんなこと訊(き)かれたって、わかるはずがないよ……。


あたしは進藤君の目から逃げるように、下を向く。

すると、進藤君にあごを持たれて、無理やり視線がぶつかるようにされる。


「俺が水嶋さんを好きだから」

進藤君はそう言って、ゆっくり微笑んだ。


ええっ!?
進藤君があたしを……?


一瞬、何を言われたのか、さっぱりわからなかった。

でも目の前にあるのは、確かに進藤君が笑みを浮かべた顔で……。

そして、今でも耳にこびりついて離れない、さっきの言葉。


──『俺が水嶋さんを好きだから』。


「俺は、自分のことを軽いと思ってるよ。でも、水嶋さんには本気だよ?」

進藤君は真剣な顔で、あたしを見る。

こんな表情を見たのは初めてだった。


「でも、信じられないよ……」

あたしが声を震わせて言う言葉に、進藤君は押し黙る。

でも、沈黙を破ったのは、進藤君自身だった。


「水嶋さんにだけ言うけど、今は3股してるんだ。でも、彼女たちと別れて、水嶋さんだけにする。もちろん、メアドもケー番も情報は全て、削除するよ」

進藤君は一切、表情を崩さずに言い切る。


──信じて……いいのかな?
今は正直、怖い。
もしかしたら、裏切られるんじゃないかって。