そ、そうなのかな……?


よく、他人に変わったと言われると本人には自覚がないということがある。

確かにその通りだ、と思った。


「不覚にも……ドキッとした」

「えっ……?」

「俺。水嶋のこと、嫌いじゃねぇよ」

え、キライじゃ、ない……?


どこか含みのある言い方だと感じてしまうと、進藤先輩の頬が微かに紅潮しているように見えた。


「今週の土曜、ダブルデートしね?」

「え? ダブルデート、ですか?」

「うん。実はさ、真実……てのは俺の彼女で、そいつが水嶋を一度でもいいから見たいって言うんだ」

そうなんだ。


まさか進藤先輩の彼女にそんなことを思われていただなんて、怖れ多くて謙遜してしまう。


「だから、ダメ……か?」

進藤先輩はあたしをじっと見つめて、顔色を窺(うかが)うように返事を待つ。


「あ、あたしは大丈夫ですけど。あとは進藤君の答え次第です」

「そっか。じゃあ、隼斗にも話しとくよ。ありがとう。──あ。家に着いたな」

進藤先輩はあたしの家の存在に気づくと、笑顔で別れを告げてから手を振った。


ダブルデート、か……。
ちょっと、楽しみかも。


今思えば、進藤君とは初デートだ。

そう思うと、ますますワクワクと高揚感がわいてきた。


──それなのに、まさかこのデートであたしたちの仲が壊れる原因になるなんて、思ってもいなかった。