進藤先輩が来なかったら、あたしは彼らに乱暴されていたかもしれない。


「そっか。最近、この辺りで不良がふらついてるっつー噂があるから、気をつけろよ?」

「はい。ありがとうございます」

「送ってくよ。また、水嶋に何かあったら、大変だし」

「あ。は、はい……」

進藤先輩とって……。
ちょっと気まずい……。


進藤先輩と帰るだなんて、進藤君に罪悪感を抱く。

けれども、進藤先輩は親切に言ってくれているので、断るわけにもいかなかった。


「そういえば、隼斗は? いつも一緒に帰ってんだろ?」

「あ……。今日は1人で帰るって言ったので」

進藤君、か……。


進藤先輩には悪いけど、進藤君が助けてくれたらもっとうれしかった。

そう思ってしまいながら、進藤先輩の後を追う。


「──速いか?」

「え?」

「歩くの」

「あ、いえ。大丈夫です……」

あくまで進藤先輩を悪く言ったにも関わらず、彼に気を遣わせてしまった。


「水嶋さ。雰囲気、変わったよな」

「え?」

申し訳なく思っていた最中、進藤先輩が意味ありげなことを言うので進藤先輩を見る。

彼はあたしと目が合って気まずくなったのか、パッと視線を斜め上へ逸らして頭を掻(か)く。


「なんか……。ますます可愛くなったっつーか」

「えっ!? そ、そんなことっ……」

「いや。隼斗と付き合い始めてから、変わったよ。絶対」