「何してんの?」

「はあ? ──誰だよ」

えっ……?


誰が声をかけたのかと思うと、あたしを取り囲む彼らの隙間から人が見える。

そこには、進藤先輩が立っていた。


「こっちは今から楽しむんだから、邪魔すんなよ」

「その子が嫌がっててもか?」

「は? さっきから、うっせぇんだよ。何様だよ」

「その子、俺のなんだけど」

「はっ?」

男子グループは揃って素っ頓狂な声を出した。


「──何なら、証明してやろうか?」

進藤先輩は彼らの間をかき分けてあたしの腕を引っ張って腕の中に閉じ込めた。


突然のことで驚いている間に、進藤先輩はあたしの顔を持ち上げて顔を近づける。


「水嶋。目、閉じて?」

「え? は、はい……」

え?
ほ、ホントにキスされちゃうの?


無意識に肯いてしまったが、今は好きな人のお兄さんに抱きしめられているんだ。

それなのに進藤先輩とキスしてしまったら、このままでは“好きな人”のために残しておいた意味がない。


それは、ダメ……!


「なーんて、な。俺のモンなんだから、テメェらに見せっかよ」

進藤先輩はあっさりと顔を引いた。


「いつまでそこにいんだよ。さっさと散れ」

呆然としていたのか、進藤先輩の低い声で我に返ったグループは何も言わずに逃げていった。


「あ、あの! ありがとうございましたっ」

「ん? ああ、いいよ、別に。大丈夫だったか?」

「は、はい。おかげで」